■ 学会関係

■ 2007.06.09〜10 第1回家庭医療後期研修プログラム指導医養成のためのワークショップ

小松@出雲市民です。(中略)

今回は以前松江生協でも講演いただいた亀田の岡田先生(現在は館山ファミリークリニック)の「後期研修のための指導医養成」というテーマのセッションがありました。

実に様々な話題を取り上げておられたのですが、その中で印象に残ったのが、「efficacy-effectiveness-fidelity」というキーワードでした。

efficacy・effectivenessはともに「効果・有効性」といった意味ですが

 efficacy…厳密な条件の下で得られる効果(実験室レベルでの薬効など)
 effectiveness…現実的な状況下で得られる効果(臨床の場で実際に得られる効果)
といった違いがあるようです。

この両者がどれだけ近接しているか、あるいは乖離しているか、といった尺度がfidelity(忠実度)なんだそうです。fidelityが低ければ、どんなに優れたefficacyを有する治療法も、実際の現場でのeffectivenessは上がらない、ということです。
fidelityを損なう要因としては、たとえば医療者側の問題(知識の欠如・適応の誤りなど)、患者側の問題(アクセスの問題、病識・価値観の問題など)、システムの問題(保険・医療制度など)が考えられます。
 
私たち臨床医が問題を抱えて現れる患者さんを目の前にしたとき、様々な知識・経験を動員して、その解決に当たるわけですが、この時effectivenessを向上させるためには @efficacyを上げる(より有効な新薬・新たな治療法を用いる)か、Afidelityを向上させるか、のいずれかの方法をとる訳です。多くの場合はAのfidelityの向上を目指す方が圧倒的に有効であり、コストパフォーマンスも優れているとのことです(新薬の開発にいかに莫大なコストがかかるか、しかしその割には本当にエポックメイキングな薬剤って少ないですよね…)。

それではfidelityはどうしたら向上させることができるのか、またそもそも何でこの話が指導医のFDなのか?(中略)

 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇

ある疾患に対して、有効性が証明された1つの治療法があるとします。その治療法の理論的な有効性(efficacy)と、実際の現場でその治療を行ったときの有効性(effectiveness)との近似性がfidelity(忠実度)である、いうことでした。

さて、fidelityを高めてゆくために私たちは何をしたら良いのでしょうか?

岡田先生はこのセッションの中で「Evidence Pipeline 」というモデルを示しておられました。
ある有益なevidenceがあっても、実際にそれが臨床現場で適切に使用され、患者さんが恩恵を得るまでに実に多くの関門がある(パイプラインの経路にいくつかの孔が開いていて、目的地に辿り着くまでに中身が漏れて少なくなっちゃうイメージ)、ということです。

その関門とはパイプラインの上流から下流に向かって、@Acknowledgement:医師がそのevidenceを知っているかどうか、AAcceptance : 医師がそのevidenceを受け入れるか、BAdaptation : 適切な症例に用いることができるか、CApplication : 利用可能な状況か、DAction: 実際に行動に移すことができるか、EAgreement : 患者さんの同意が得られるか、FAbide:患者さんの遵守が得られるか、と多岐にわたっています。それぞれの頭文字をとって7Asと表現されていました(外人さんはこういうのが好きですねぇ…)。

fidelityを向上させてゆくには、上記のそれぞれのステージでの問題点を認識し改善してゆくことになります。その方略はステージによって若干異なります。
上記@〜Bのステージでの障害は医師の認知・受け入れ・適応選択の領域の問題になります。従って医師に対する啓蒙、journal clubなどの学習を促す取り組み、臨床の場でのfeed backなどが有効と思われます。これは通常の医師研修の場でもよく行われていることだと思います。一方、CDのステージでの障害は医療供給システムの問題であり、場合によっては院所の管理部門やさらには行政をも巻き込んだ取り組みが必要になったり、またEFのステージの解決に際しては、患者さん・利用者の決断のサポート、行動変容を促す能力が必要になります。本当に幅広い能力が求められる訳です。

こうした総合的な取り組みを通して、はじめて臨床の場でのfidelityを改善させることができ、患者さんのeffectivenessの向上につながる。これすべてが臨床家の任務である、ということでした。

私たちが行っている日常臨床の、そして医師養成の目標は突き詰めると、こうしたfidelity・effectiveness改善の積み重ねを通して、地域住民の健康状態の増進をはかってゆくことであると思います。診療や研修・教育の諸場面で、常にここに立ち返る姿勢が大切だなぁ、と感じました。

岡田先生の「医師教育のトレンドは『Outcome based education・Learner centered education』から『Clinical outcome based education ・Patient centered education(いわゆる[患者中心の」というよりも「地域住民の健康状態増進を最大目標とする」といった意味合いでしょうか)』へシフトしてゆく」、という言葉が大変印象的でした。(後略)(メーリング・リストより)

関連リンク

back next

学会関係の一覧へ戻る >>

とりくみのトップへ戻る >>


 


作成日 :
2007年07月03日(火)