「研修医のメンタルヘルスケア」
2008年12月13日
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- 出雲市民病院/ICFM事務局の松下です。
先日、前野哲博先生(筑波大学附属病院総合臨床教育センター副部長)の講演に参加してきました。
島根県と島根大学共催の若手医師ステップアップ研修会でのものです。
講演のテーマは「研修医のメンタルヘルスケア」でした。
内容は、医療者のストレス、ストレスの一次予防、ストレスの二次予防、ストレスの三次予防、病院におけるメンタルヘルスケア、です。
講演の中で、「臨床研修は、うつ病発症に『最適』な環境である」というのがありました。
僕も研修医のストレスが大変なことは一応わかっているつもりでした。
しかし、うつ病を発症しやすい環境を列挙したうえで、ああもはっきり言い切られるとさすがに少しショックでした。
さらに、質疑応答では「職場復帰するのに適している臨床の場はどこにもない」と。
まさに「研修病院にとって、うつ病への対応は避けて通れない問題」です。
前野先生は初めに「ストレスモデル」を用いて、ストレスの概要を説明されました。
「ス トレス要因」(労働時間、受持患者数、ミス・失敗など)が大きくなると、「ストレス反応」(抑うつ、燃え尽き、薬物依存など)が生じ、その人のストレス耐 性の限界を超えると健康障害を起こし、「個人への影響」(ドロップアウト、進路変更、自殺など)や「診療への影響」を及ぼします。
ストレス反応の大きさは、「個人的特性」や「緩和要因」(周囲のサポート、flexibilityなど)にも大きく影響を受けます。
それぞれのプロセスでストレスへの予防が必要ですが、まずはやはりストレス反応を起こさせない一次予防が大切です。
ストレスの一次予防のポイント
●ストレス要因の軽減
・週勤務時間は90時間以内
90時間を超えると抑うつ状態を示す数値が一気に上がります。
・呼ばれない休日を確保
会場にいた研修医も平日少々遅くても休日完全に休める方がいいという人が大半でした。
また、OFFの時間を確保するには「主治医制」より「チーム制」が有効とのことでした。
・研修医のレベル、個性に合わせたフォロー体制
自信家タイプ、不安が強いタイプなど、研修医の個性に配慮した指導がもとめられます。
しかし、それ以前に研修医特有のストレス(人間として、未熟な医師として、新米社会人として)の理解が前提になります。
●ストレス緩和要因の増強
・安全な「学びの場」の確保
安心して何でも話せる研修医-指導医関係のことです。
対人ストレスが下がれば協働意欲が上がるという関係があるそうです。
・自己効用感を高める指導とフィードバック
とにかく研修医が低いとされる裁量度と達成感を高めるような指導をすることです。
・現実的かつ具体的な目標設定ときめ細かなサポート
これらのポイントは、臨床研修の教育面として重要なことと共通していると思います。
あらためてこういう方向で研修を整備しなくてはいけないと感じました。
前野先生は「ストレス反応の早期発見が大事だが、それが一番むずかしい」と繰り返しておられました。
まず何より、研修医も、指導医も、研修にかかわる他のスタッフも、メンタルヘルスケアについて正しく理解することだと思います。
本人でも、他の人でも、誰かがストレスに気づけばうつ病は防げるかもしれない、あるいは軽い症状ですむかもしれないからです。(メーリング・リストより)
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